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研究委員会

都市交通研究所では研究委員会を設置しています。


インバウンド観光の進展と都市観光および都市交通事業委員会


主査:青木真美(同志社大学教授)
副主査:毛海千佳子(近畿大学准教授)
副主査:酒井裕規(神戸大学大学院准教授)

 2003年4月にはじまった訪日外国人増加計画であるビジット・ジャパンのプロジェクトが効を奏して、その時点では年間500万人程度だった訪日外国人数が、2018年末には3000万人を突破し、さらに2020年の東京オリンピックの年には、年間4000万人、2030年には年間6000万人が目標とされている。
 しかし、観光インフラの整備が追いつかず、宿泊施設の不足や民泊による住民との軋轢、渋滞・混雑や駐車場・トイレ不足、ごみ問題などの問題を抱える観光地も増加してきている。
 一方で海外からの訪日客の大半をしめる中国・香港・台湾・韓国からの旅客も、これまでのような団体旅行ではなく、個人旅行に移行していくと思われる(現在でも個人旅行者が約6割を占めているといわれている)。個人旅行者は海外からのインターネットで情報を収集、予約なども行っている。旅行先も東京、京都、大阪といった大都市から地方都市へシフトしている。旅行先でもインターネットの情報を駆使しながら、観光地へのアクセスや観光地そのものの選択、飲食店の情報収集などを行い、ガイドなしでも一人歩きができるように見受けられる。
 そのため、観光地ばかりでなく日本全体で、団体旅行とは異なった受け入れ態勢の充実を再度検討しなくてはならない段階に来ているといえる。さらに従来型の物見遊山、モノ消費型の観光から、コト消費型のオルタナティブツーリズム(エコツーリズム、グリーンツーリズム、産業ツーリズム、スポーツツーリズム)への展開やMICE(Meeting,Incentive,Convention,Exhibition/Event)の誘致などの面からも、都市交通事業が相応の役割を果たしていく必要がある。
 この研究プロジェクトでは、インバウンド観光に対する国の政策や動向について基本的な動向を押さえ、インバウンド観光客の公共交通利用についての要望や不満の解明およびそれに対する対応や解決策を探る事を第一の目的としている。さらに、前述のようなオルタナティブツーリズムの視点から、その可能性と展望を分析し、その一つとしての都市観光における鉄道の役割や沿線の魅力の向上についても検討していく。



 
逆都市化と公共交通の維持運営委員会


主査:兒山真也(兵庫県立大学教授)

 逆都市化は「都市の発展段階論」で用いられてきた用語であり、都市の発展と衰退の循環モデルにおける、都市圏全体の人口減少期を意味する。逆都市化により都市圏全体で鉄道需要が減少するおそれがあるが、とりわけ郊外部において鉄道需要減少が深刻化しているのが現状ある。関西圏では一部の鉄道路線で大幅な需要減少がすでに顕在化している。国土交通省が定義する地域鉄道のみならず、都市鉄道の範疇であってもこうした現象と無縁ではない。需要減少の速度も重要であり、それが対応をいっそう難しくするケースが今後増えることが予想される。
 逆都市化への都市交通の対応について「適応策」と「緩和策」の観点から論じた大西(2015)をやや拡張すると、適応策とは、逆都市化(低密度化、高齢化、人口減少)を前提とした、主に供給面の効率化を意味する。運行や管理の合理化、経営形態の見直し、ネットワークの見直し(縮小、接続)などが含まれる。一方の緩和策とは、逆都市化を前提とした短期から長期にわたる需要喚起策を意味する。
 当委員会では上記のうち、逆都市化を前提とした、供給面(適応策)及び短期から中期レベルの需要喚起策(緩和策)を対象とした検討を行いたい。供給面については、効率的供給、サービスの内容及び水準の選択、公民連携(公的関与、公的資金・補助制度)、地方自治体の交通政策、住民参加、合意形成といった課題が需要面については様々な需要喚起策の効果、効率性、妥当性といった課題が議論の対象となる。
 当委員会の検討課題は2001〜2004年の「都市交通事業の経営手法:新たな展開委員会」(報告書は整備手法、効率化手法、不採算路線対策の3部構成)に近い。10年余りを経て、交通政策基本法の制定(2013年)など社会の変化を踏まえ、改めて議論するものと位置づけられる。


都市交通事業と沿線コミュニティ委員会


主査:宇都宮浄人(関西大学教授)
副主査:橋愛典(近畿大学教授)

 関西圏の交通事業者は、沿線人口の減少、高齢化といった中、右肩上がりの利用者増が望めない状況にある。しかしながら、今後、成熟した豊かな地域社会を築くためには、単に大量輸送手段として交通サービスを提供するだけではなく、沿線コミュニティの諸課題に即したサービスを提供することが求められる。また、そうした量より質を重視することで、交通事業者、利用者、地域社会全体にとって「三方よし」の関係を築くことができる。
 そこで、本委員会では、交通事業者と沿線コミュニティの関係を多角的、かつ定量的に検討することで、新たな交通事業者の役割を見出すことを狙いとする。具体的には、従来からの不動産や商業といった関連事業のほか、高齢者や女性の社会参加、子育て、空き家の活用など、さまざまな沿線コミュニティの課題に対し、どのように鉄道事業者が貢献できるのかなど、幅広い視野に立って論点を整理することが一つの目標である。 また、新たな試みとして、沿線地域が求めている交通事業者のサービスの「質」を定量化すべく、各事業者のこれまでの取り組みを整理したうえで、委員会として顧客満足度調査等の新たな統一的なアンケートを企画・実施し、結果の分析を行う。


 
鉄道沿線の健康まちづくりと鉄道事業に関する研究委員会委員会内部ページ


主査:秋山孝正(関西大学教授)
副主査:水谷淳(神戸大学准教授)

 これまで、集約型都市構造のコンパクトシティ、環境に配慮したスマートシティの動向を踏まえて、近年では超高齢社会における課題として、健康を意図したウエルネスシティの構想が提唱されている。また都市鉄道の沿線地域の健康は、地域活性化につながり、超高齢社会の生活様式の変化に配慮した持続可能な都市交通システムの構成が期待されている。
このようなことから、本研究委員会では「鉄道沿線地域の健康まちづくりを考えた鉄道事業」の具体的な構成と沿線地域活性化に関する有効性を検討する。
超高齢社会となり、京阪神都市圏における都市鉄道需要の減少が顕著であり、また生活様式の変化から多様な都市交通パターンの変化への対応が重要である。市民の健康増進は、地域活性化と都市交通需要の増加を与える。また、高齢者の健康増進・介護予防の視点からの具体的な都市鉄道事業者の役割りを導出し、健康まちづくりの地域貢献として位置づける。この研究委員会は、「都市鉄道ネットワーク」委員会からの発展的研究を明確化する委員会としての性格を有している。


 
新型コロナウイルスの影響をふまえた交通需要予測委員会


主査:兒山真也(兵庫県立大学教授)
副主査:三古展弘(神戸大学教授)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、鉄道事業者は例外なく大幅な減収に直面し,経営状況は過去に例を見ない危機的水準にある。さらに、現時点では収束の兆しが見えず、影響の長期化が懸念されるうえ、その予測は容易ではない。企業では、従来はかけ声にとどまっていたテレワークやWeb会議が一気に普及し、通勤手当廃止の事例も出ている。大学でもオンライン授業が広範に実施されている。跡形もなくなったインバウンド観光も復旧の経路は見通し難い。
 新しい生活様式が定着した後も、鉄道事業者が、不健全な状況に陥ることなく、高品質な輸送サービスを維持し、その社会的役割を果たし続けるためには、客観性の高いアフターコロナの交通需要予測を基礎として正しい経営判断をすることが求められる。この交通需要予測について研究者と鉄道事業者とが協力し可能な限り迅速に進められるべきと考える。
 また、都市交通に限ったことではないが、パンデミック(世界的流行)が社会、経済活動に及ぼす影響を紐解くことは、これまであまり研究されていなかった分野で、かつ、今後、探求が求められるテーマであると思われる。
 本委員会では、まず、新型コロナウイルスの影響を受ける前の交通需要の目的別内訳や交通需要と相関性の高い社会的指標等を調査し、海外を含めた過去の疫病発生収束事例等もふまえ、収束後その目的別、エリア別の需要がどのように変化すると考えられるか、研究・予測する。前例のない変化が生じていることから、いずれトレンドに復帰するとは限らない。科学的な予測というよりはシナリオの検討というべきものとなるかもしれない。


 
「これからの鉄道ターミナルを考える」研究委員会


主査:西井和夫(山梨大学名誉教授)
副主査:秋山孝正(関西大学教授)

 これまで都交研の研究委員会では、都市鉄道事業を取巻く「鉄道サービス・運賃論」、「需要分析・予測方法」、「ネットワーク整備論・沿線開発」など数多くのテーマについて検討が重ねられてきた。近年では、「鉄道でまちづくり」や「都市のコンパクト化と交通」のテーマのもとに「駅」(ノード)施設のサービス機能の検討あるいは駅施設の周辺地区形の変遷は、都市鉄道事業者にとって事業経営に直接的な運輸・交通部門に関連する「サービス」「需要」「ネットワーク整備」から「鉄道とまちづくり」「公共交通と都市構造」という外部性(関係性)への展開(ここで、関係性とは『都市鉄道事業』を『都市』と『鉄道(事業・経営)』との関係性を指す)が特徴的である。今後は、鉄道事業を通じた様々な革新的なサービスの提供が地区や沿線の付加価値の向上そしてまちづくり(鉄道ターミナルエリアの拠点機能強化)にどのように資するかという主題への実証的(定量的)展開が求められる。また、このような研究テーマの変遷の時代的文脈に着目すれば、都市鉄道事業者にとっては鉄道事業部門(交通サービス中心の運輸交通部門)だけでなく、非鉄道事業部門(不動産・レジャー・小売などの都市開発部門)拡充・強化による事業経営戦略についても注目すべきであり、さらには今回の新型コロナ感染症の世界的拡大に伴い「with/post-corona社会」を見据えた新しい生活スタイル(New Normal)へ適切な対応のあり方についても喫緊の対応テーマとして位置づけるべきであろう。
 そこで、本委員会では、『交通結節施設』そして『都市的活動の場(空間)』としての「鉄道ターミナル(エリア)」をキーワードとして取上げ、交通サービスだけでなく様々な都市的活動サービスの「空間」として、利用者にとって魅力的な(付加価値の高い)、事業者にとって持続可能な事業戦略に適った(sustainably manageable)そして望ましいエリア形成(まちづくり)に資するような、これからの鉄道ターミナルの空間整備のあり方を検討していく。
 「鉄道ターミナル」に着目するのは、「鉄道駅」(駅本体施設)という表現とは区別して、まちづくりや地区・拠点形成の検討において、鉄道駅施設に直結(隣接)した地区として一定の空間的広がりを有するエリアの有する諸機能(交通結節機能とそれに関連した都市的諸活動のための空間機能)を明示的に取上げることができ、またそれらの多様でかつ今日的ニーズに合致した革新的なサービス機能の充足・整備によって「鉄道と都市との新たな関係性」の構築に向けた知見を得ることが期待されるからである。
 本委員会は、都交研の学識メンバーおよび鉄道事業者メンバーの他に、5名の招聘委員の体制により2020年11月にスタートし、数回の研究委員会を開催してきた。この間、これまでの研究委員会の諸テーマを再考し、鉄道事業と都市との関係性に着目した鉄道ターミナルエリアの捉え方、政策評価・効果分析の考え方とともに、鉄道ターミナルにおける移動・活動サービスに関する定量的な需要分析方法およびエリア・マネジメント手法についての基本的な課題の検討を行っている。2021年11月からは,2年目に入ることから、これらの課題に対する実証的な分析に入るとともに、その結果を踏まえながら、都市鉄道事業者にとって、post-coronaを見据えた鉄道ターミナル整備が多角的経営などの事業経営戦略にどのように関与と影響を与えるかについても検討を進める予定である。


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